哀しい恋(「小松未歩4 〜A thousand feelings〜」収録 / 小松未歩

小松未歩4?A thousand feelings?

小松未歩4?A thousand feelings?


彼女の音楽は、例えて言えば、国語の教科書に載っている類の文学作品だ。「赤い実はじけた」とか夏目漱石の「こころ」とかね。旋律は良い意味で教科書的で、心地よいとされるメロディの法則をしっかり押さえている。その正攻法の上に立脚する彼女の才能は、話し言葉と書き言葉とをしっかりと使い分け、うれしい気持ちには和語を、寂しい感情には漢語を印象的に使い、英語詞はエピローグにのみ集約させる文学的センス。そして重低音を際立たせるのではなく、おとなしいボーカルをはっきりと聞かせる音量のバランス。聴覚つきの文学ともいえるが、音楽が生活のすべてというような人にこそ、精神安定剤として機能してくれる必要な音楽だと僕は思っている。